贈物の技術

貴様は言うだろう。どんたくをローファーで練り歩く敬虔な革靴主義者がまた、傲慢で破廉恥な気を起こしただけではないかと。しかし貴様が未だかつて果たしたことがない素敵との邂逅を、俺は果たしたのだ!!

一昨年の夏、神戸転勤になり3年半ぶりの京都凱旋を果たした私は、恋人に誕生日プレゼントを贈るためJOHN SMEDLEYを訪れた。あの時の私は確かに、アイコニックなニットシャツを贈ることに意味を見出していた。

私は自らの成長を感じて悦に入った。私ってセンス抜群!贈り物なんて一方通行なのだからそれでもいいだろうと思うけど、結局一度もしっくり来るコーディネートにお目にかかることはなかった。

関係が軟着陸を迎えようとする時、そのニットシャツが乾燥機の中で逞しく回っていたこともあったが、それは本稿の趣旨から逸脱するので割愛する。ちなみに“前も乾燥機にかけた”らしく縮まなかったらしい。

確かに貴様の言うことにも一理ある。側から見ていればそう見えるだろう。しかし、半年以上も前に一度だけ見た彼女の紺ブレザーがあまりにも素敵だから、そのコーディネートに合う革靴を贈りたいのだ。

今回も実に一方通行な贈り物ではあるけれど、前回とはまるで違う。自分が送り付けたいものを贈るのも一興。でも、相手に似合うものを送るのもまた一興。これこそ贈物の技術!なむなむ。